ペットショップ・るんるん

DIARY

題名:2005年5月22日

2015年12月14日 by おかぴ

■「るんるん」

こんばんは。2回目の今日は、私の末っ子「るんるん」について書こうと思います。
ご来店頂き、うちのわんこたちをご覧頂いた方はお分かりになると思いますが、お店に私の犬がスタッフドッグとして一緒に働いております。(ほとんど遊んでるだけですが^^;)
その中にはボストンテリアの「るんるん」がおります。
ご覧になられた方は一目瞭然ですが、るんるんはぱっと見ただけで、明らかに体が小さく、足が悪いという事に気がつかれたと思います。

以前勤めていたショップで、るんるんは5人姉弟で生まれ、いわゆる未熟児、そして生まれつきパテラ(ひざが悪い)と軟口蓋拡張症(のどが垂れ下がっている)いわゆる先天的な欠陥を持った「奇形」で生まれてきました。
一人だけ男の子で、ほかの女の子たちの3分の1から4分の1で生まれたそうです。
私がるんるんに出会ったのは、生後25日ぐらいでしょうか、出会った時の体重がボストンの生後25日ほどでたった330gで、軟口蓋で母乳が鼻からほとんど出てきてしまっていたので、人口哺乳でもほとんど大きくなっていませんでした。まるで干からびた干し芋のようでした。
「もうこの子は大きくなれないだろうね。かわいそうだけど、あきらめなきゃいけないかもね・・・。」という上司の判断に私もはじめそう思いました。

でもしばらく様子を見ていると、3分の1しかない体と、ほとんどミルクの飲めていない体でよろめきながらも、おねぇちゃん達にまざって母犬の母乳を必死で探し、吸おうともがいていました。
そのうちに私の中で「もうちょっとがんばらせてみたい、この子まだあきらめないでも・・・どうしても育たないのかな・・・ダメもとでも育ててみたい」という気持ちが沸いてきました。そして上司には反対されましたが、るんるんの権利を私に譲って頂き、るんるんと私の子育て成長奮闘が始まりました。

るんるんは、軟口蓋拡張症といってのどちんこ(笑)が大きく垂れ下がって気管や食道の入り口をふさいでしまっています。やわらかいものでないとうまく胃の中まで入っていきません。そして一番苦労したのが、垂れ下がったのどのおかげで、水分という水分がほとんど鼻から出てきてしまうのです。これで命を落としかけました。こいぬにとってミルクが飲めないという事は、死です。そして誤嚥といって気管にミルクが入り込んでしまい、肺炎を併発しこれまた死を覚悟しました。
でもすべてのミルクが鼻から出ていたわけではなかったのでしょう、25日間生きられていたのは。でも私が受け取ってからすぐに、誤嚥性肺炎を起こし、もう口からの授乳はあきらめました。この日からるんるんは、一切の水分を断つ、断水生活が始まりました。
カテーテルといって、胃の中に管を通し、直接ミルクを胃に流すという方法と、後は時期が早かったのですが子犬用のドライフードにミルクをたっぷりと含ませ、離乳させて食べさせるという方法の2択にしぼられました。
カテーテルの授乳は苦痛を味わいます。そして専門の技術が必要になります。
私は、パピーフードにミルクを含ませ、水分と栄養をフードから取らせる方法を選択しました。そして脱水を防ぐために毎日皮下注射の点滴に通いました。

るんるんはとても強い男です。
低血糖や脱水、鼻から水がでて呼吸困難、肺炎、水頭症の疑いなどさまざまな事が彼に降りかかりましたが、一度も「るんるん」しなかった事はありません。
本当にいつでも「るんるん」と明るく振舞ってくれて、大きく強い眼で私達を見つめ、生きる意志をあきらめない子でした。
私がるんるんにした事は、2時間おきに食事を作り食べさせる事、肺炎を治す事、あとは身の回りのお世話。たったこれだけで、あとはるんるんが生きる強い意志で本当によくがんばりました。

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生まれ持ったハンディに勝ち、大きく育ってくれたのです。
5月9日で1歳になりました。
あのるんるんが1歳です。
感無量でした。
まだまだ、水は普通には飲めなかったり、ひざが悪かったり、やはり今でもたくさん不自由な事はありますが、本当におおらかでやさしくたくましく元気に生きてくれています。

そんな「るんるん」から私は自分のお店の名前をもらいました。
るんるんの様に、私もお店もどんな逆境や困難に出会っても、明るくやさしく強く一生懸命やって乗り越えていけるようにと。

私達、人は、そして特に日本人は「パーフェクトベビー願望」がとても強くあるように思います。
100%な子でなければ満足できない納得できないという潜在的な意識が強くあるのではないかと。
もちろん、私の場合は商売でパピーを高い値段でお売りするのですから、パーフェクトな子を探してお渡しするのが使命です。
しかし人でも同じように100%な子など、そう簡単にはめぐりあえません。それぞれ何か欠点があったり、先々病気もすれば容姿も変化します。
でもみな同じわんこ。みなそれそれ個性。みな同じ命。このパーフェクトベビー願望を捨てた時、私はさらにわんこたちが愛おしくなりました。

そして純血種である雑種であるという違いも、大きく意識してしまうところですが、これも同じ様に考える事ができます。
しかし純血種は高い値がつきます。雑種にはつきません。
なぜでしょうか・・・。同じ犬なのに・・・。
純血種だからいい犬だ。雑種だから大した事ない・・・。
私もこの仕事についてからずっと頭から離れない事でした。
私が思うに、なぜ純血種に値がつくかと言えば、
純血というように、その子が生まれてくるまでの、「血」を守るための育てるための長い長い歴史と努力、そのブリーダーさん達の知識と技術、そして膨大な手間と時間と努力のお世話の代金ではないかと。
ブリーディングは素人ではできません。
本当にプライドと犬への愛情と「血」を守るための努力を惜しまぬブリーダーさん達へ。心から尊敬します。
でも同じわんこです^^
人の変わらぬ愛情がどちらにも注がれますように。

店頭に並ぶ元気なこいぬたちの影では、るんるんの様な子たち、ばんびたち(繁殖犬でした)の様な母犬たち、そしてブリーダーさんの努力を忘れてはいけないといつも思っています。

この異常に加熱するペットブームの裏で、やはり不幸にも虐待されたり殺されたり悲しい思いをしているわんこにゃんこちいさい動物たちがいる事を忘れず、この世から不幸な子達がいなくなるように私のできる事を、少しづつでも小さくでもやっていこうと思っています。

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